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Talkin’ About Nagasaki ―ゲスト:梅元 建治さん[01.長崎市の文化財・景観資産が抱える問題]

私たちNagasaki365は「ローカルについて思考・議論し、再定義し、再構築することが、その集合体である日本そして世界の豊かな未来を創る。」と考えています。私たちはローカルであるここ長崎で今、何を見て、何を考えるべきなのでしょうか?

ここに一つのヒントを見つけるために、Nagasaki365は長崎の各分野におけるトップランナーがどのように長崎を見ているのかをインタビューでお届けする “Talkin’ About Nagasaki”を始めることにしました。

第1回目のゲストは一般社団法人ナガサキベイデザインセンターの梅元建治さんです。

梅元建治さんプロフィール

1967年 長崎市生まれ。県立長崎南高等学校(23回生)〜長崎大学工学部卒業後、九州芸術工科大学環境設計学科岡研究室に在籍。福岡市の株式会社環・設計工房にて、建築設計、地域計画、市街地活性化事業、環境デザインを担当。父の死去に伴い2000年~有限会社海産工房梅元 専務取締役。茂木商工会青年部部長、財団法人ながさき地域政策研究所登録研究員、長崎県行財政改革懇話会委員(県総務部)、県立大学長崎シーボルト校非常勤講師、KTN「ヨジマル」コメンテーター等を経て2010年から一般社団法人ナガサキベイデザインセンター代表理事。 現在は、 長崎市デザイン会議委員、長崎県美しい景観まちづくり審議会会長、景観形成(地域振興)アドバイザー、長崎居留地まつり実行委員会事務局長、NPO法人長崎コンプラドール理事、長崎近代化遺産研究会理事、長崎市ブランド振興会企画部会長、長崎市立大浦小学校PTA会長などを務める。
Facebook:https://www.facebook.com/kennji.umemoto

■取材場所:東山手洋風住宅群
市指定の文化財。また、洋館が立ち並ぶ東山手地区一帯も国の伝統的建造物群保存地区(通称:伝建地区)に選定されている。

■インタビュアー:久保圭樹
株式会社ネットビジネスエージェント 代表取締役
Facebook:https://www.facebook.com/keiju.kubo

【目次】

01. 長崎市の文化財・景観資産が抱える問題

久保:梅元さん、今日はよろしくお願いいたします。この東山手洋風住宅群から長崎を眺めると、長崎の歴史を感じられますね。長崎の価値を考えたときに、特にこれらの街並み、建物といったものは何よりも大きな資産であり、長崎をユニークな都市にしているものだと思うのですが、多くの長崎県民・市民の意識に上ることって、ほとんどないと思います。梅元さんが関わる居留地まつりやPTA活動を通じたまちづくり、市民活動の話はよくお聞きしていますが、一方で、長崎県美しい景観まちづくり審議会の会長など行政に近いお仕事もたくさんやられていますよね。こういった長崎市の景観や文化財は現在どのような状況にあるのでしょうか?

梅元:今、これらの文化財や景観資産を維持していくことが非常に難しくなっているという現実があるんだよね。長崎県、そして長崎市にはたくさんの文化財があって、その維持を考えると膨大な資金が継続的に必要となる。そのためのお金を生み出すためには「文化財を活用して新たな資金を生み出す仕組み」と「それを可能にする制度」が必要だと考えているんだけど、残念ながら、長崎市でいえばその制度設計がまだまだ整っていないという問題があるね。

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保存重視の文化財保護”から抜け出せない長崎市

梅元:東山手洋風住宅群が市指定有形文化財に登録された当時の文化財保護法は、“活用しよう”という視点よりも、文化財そのものが高度経済成長期による開発によって壊されないように“保存しよう”という法律だったんだよ。

久保:文化財保護法には活用という視点がなかったということですか?

梅元:そう、高度成長期においては、保存だけ。それが後に文化財とは言え、活用していこうという法律に改正されたんだけど、長崎市においては改正前の運営方法がそのまま残っていて、とりあえず保存し維持している状態が続いているんだ。他の市町村と比べて文化財をたくさん保有している分だけ負担が大きいんだよね。

東山手地区の場合は、原爆の影響を受けてはいるけど被害が少なかったから戦前の建物が結構残っているんだけど、それでも老朽化が理由で壊されていってる。平成3年にこの辺り一体がすべて伝建地区に選定されて景観と文化財を守ろうという中で30年くらい経ってて、活用委員会も立ち上げているけど、なかなか活用が前に進んで行かないという現実があるね。

久保:活用が進まないのはどういう原因が考えられるのでしょうか?

梅元:地域の人たちが、街の文化財を保存しようとする時は、自分たち独自の方針を決めて、総事業費全体の半分は国が、1/3は県が、1/4を市が、そして残りの事業費を地域の人たちが出すという仕組みでやってきているんだけど、この事業費の構造ゆえ、独自で残して活用していくという事がなかなか進まないということが考えられるね。財源の確保が難しく、件数も多いからね。

久保:実際は保存という名目で税金が投入されているものの、普段は誰の目にも届かず放置に近い状態になっているものもありそうですね。継続的な財源を確保するためにもやはり人の出入りがあって、施設利用料や寄付にて資金を得られる仕組み、その場に対する想い入れを醸成することが必要だと感じます。

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梅元:そう、流動的に活用することが必要なんだよね。でもそのためには制度がいる。今、ここ東山手洋風住宅群は指定管理者制度を導入していて、東山手地区町並み保存会という活用委員会を地域で立ち上げて名目上は市民が運営をしているんだけど、南山手地区町並み保存会と合わせて年間約500万円が人件費としてかかっている…。それとはまた別に補修費も必要となるけれど収入がほとんどない状態なんだよね。同じようなことが片淵町の心田庵や中小島にある中の茶屋にも言える。

行政の立場でつくられている指定管理者制度

久保:費用がかかってばかりで、管理を代行している団体にとっては頭が痛いはなしですね…。自分たちの街の文化財を守ろう、後世につなごうという使命感だけでやりつづけている状態は、非常に危ういと感じます。グラバー園でさえも、約30年前には200万人ほどいた入場者数が、現在は100万人ほどになっていますから、当然長崎市全体で考えても文化財の維持管理に使えるお金も減っているはずです。文化財をうまく維持管理できないと長崎の魅力、アイデンティティに大きな影響があるかと。

梅元:そうだね。グラバー園(園内にある旧グラバー住宅は世界遺産にも登録されている)でいえば、2008年に指定管理者へ移行して10年以上になるんだけど、運用については行政・議会の指定管理者制度の規約・条例があって、その条例が長崎市が管理しやすいように作ってある。長崎市にとって管理はしやすいから破茶滅茶な事にはならないけれど、任されている指定管理事業者からするとお金を稼ぎにくい構造になっているんだよね。それに、収益のうち行政に納められた2億5千万円は一般財源になる。一般財源と言うのは、自治体が自らの裁量で自由に使い道を決定できる財源のことで、道路を作ったり福祉に使われているんだよ。ここで上がった収益が、優先的に伝統的な物の保存や維持に使われる仕組みにはなっていないという問題がある。今、グラバー園は耐震補強を含めた外観のリニューアルを行なっているけれど、中の展示物の補修まで手が回っていないのが現実なんだよ。

久保:仕組みが現実と乖離しているわけですね。

梅元:そうなんだよ、仕組み。だから、この件もそうだけど市民活動をすればするほど仕組みの問題が浮き彫りになる。制度設計は行政や議会がやっているから、本当に手を出したいところ、変えなければいけないところは市民活動じゃ無理なんだよね。子育て支援や若者定着の話も制度をもう一度新たに見直していく必要があると思う。市民活動は、自分たちがやりたい事をNPO化したり会社をつくったりとやってはいるけど、それを支える大枠の仕組み・枠組みがこのままではね…。

地域にとって大切な場所や建物を守るための景観まちづくり審議会

久保:県の景観まちづくり審議会では何をやっているんですか?

梅元:長崎県美しい景観まちづくり審議会は、長崎県内にある文化財には指定できない個人や民間企業の所有物、地域にとっては大切な場所や建物などを申請・登録してもらうことで補修費を行政が一部補助しようというもの。県と市の両方が認定するのは、補修費を折半するためで、例えば建築家の中村亨一さんが改修した日本基督教団長崎教会や深堀の石塀なども認定されているんだよ。文化財ではないけど、景観資産として残して行こうという取り組みだね。

久保:景観資産を認定するのが景観まちづくり審議会なんですね。

梅元:そう。こういった案件が今まで百数十件あったから、認定するだけでいっぱいいっぱいだった。だけど、認定するだけでなく活用についても文化財同様に考えて行く必要がある。そうする為には市民と文化財や景観資産との関係性を作らないといけない。この東山手も今は保存会が請け負ってやっているけど、もっと若い人に使ってもらうとかマネジメントが必要。

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久保:企業で使いたいということもきっとたくさんありますよね。

梅元:あるある。そうすると、ここ東山手洋風住宅群だって、維持に必要な修繕が頻繁に出来るようになる。持ち主は市、管理を保存会にお願いしているというだけで、活用や運用については誰も手を出しきれていない。収益を生み出すところまで辿り着けないでいるんだから。

久保:持続させる仕組み、ですね。

梅元:一番はやっぱり、長崎市全体が持続可能な町・都市になって行くのがいい。持続可能な都市にするためには、収益を生み出す経済的なものを仕組みとして作り出す必要がある。今、長崎市は色々な開発の案件で歴史ある建物が壊されて行っている。市民活動も盛んになっていて議論されているけど、僕はただ”建物を残せ”という議論だけじゃなくて、”建物をどう活かすのか?”という議論が必要だと思うんだよね。

「02.持続可能なまちづくりのために」に続きます。»

【目次】

ライター

久保圭樹
久保圭樹

Nagasaki365の発案・企画・設計、Webデザイン、写真撮影などを担当。普段は企業のWebサイトの企画・設計、デザイン、Webマーケティングのコンサルティングなどを仕事にしています。

http://www.nb-a.jp

Updated: 2019.03.28

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